この記事は New Relic Advent Calendar 2025 16日目の記事です。
先日、ラスベガスで行われたAWS re:Invent2025 に参加し、今回もこちらのNew Relic社提供のAWS GameDayへ挑戦しました。
AWS GameDay: AI-Assisted Developer Experience ft. New Relic (GHJ306)
ちなみに、結果は58チーム中14位でした。序盤は2位と上位争いで順調だったのですが、後半にかけて失速してしまいました(><)
私は普段からNew Relicを使っていることもあり、New Relicパートの問題を担当したのですが、その中で知らない技術に遭遇しました。
Amazon Q Developerに話しかけるだけで、New Relic上のデータを調査から設定までしてくれる....
具体的には
- 異常なメトリクスの分析やAPMのエラー調査
- とっつきにくいNRQLの生成→ダッシュボード構築
- 監視アラートの設定
などなど、何でもできちゃう優秀なオペレーターに出会ったのです。この人のおかげもありサクッと全体2位で全問解き終わりました!!
今回はそのオペレーターの正体である、New Relic AI MCPサーバについて調査したので、まだ知らない皆様へご紹介します。
目次
- インフラエンジニアが抱える二つの大きな壁
- Model Context Protocol(MCP)とは?
- New Relic AI MCP の価値
- 【デモ】AWS Q Developerで実現する、属人化からの解放!
- まとめ
インフラエンジニアが抱える二つの大きな壁
インフラエンジニアの皆さん、日々の運用でこんな課題に直面していませんか?
オブザーバビリティの「高い壁」とアラート疲れ
オブザーバビリティ(New Relic)を導入するとなると、メトリクス・ログ・トレースという膨大なデータを収集することになります。しかし、そのデータを使いこなすには、深い理解とNRQL(New Relic Query Language)のスキルが不可欠になってきます。
- 現状の課題
大量の監視項目、アラート通知が多すぎる問題。
→ 本当に重要な通知を見落としまう。対応も特定の熟練者に依存してしまう「属人化」している状態。 - 本来やりたいこと
真に必要なアラートだけを通知し、障害対応を特定のエンジニアに依存させない「標準化」を実現したい!
クラウドコスト最適化の課題
サービスの成長とともにクラウドコストは増大していきます。しかし、どこを削るべきか、どう監視・制御すればいいか、判断が難しいですよね。。。
「インフラ監視は完璧なはずだけど、それが直接、コスト削減やユーザー体験向上に繋がっているのか?」
というような課題もあるでしょう。
生成AIブームがもたらした希望、そしてMCPサーバーの登場!
昨今のChatGPTをはじめとする生成AIのブームの中で、私含め、きっと誰もが「AIに自然言語で尋ねるだけでトラブルシューティングできたら...」と願いました。
その願いを叶えるのが、New Relic AI Model Context Protocol (MCP) Serverです。
冒頭記載しましたが、私も数日前まで知らなかったのですが、実際に利用するととてつもない優秀な相棒ができた感じで非常に便利に感じます!
今回はこの「New Relic AI Model Context Protocol (MCP) Server」についてご紹介をします。
Model Context Protocol(MCP)とは?
MCPとは?
最近よく聞くMCPって何かと、一言で言うと、
MCP = AIと外部ツール・データを繋ぐ「共通言語」や「AIのUSBポート」のような標準規格
今回の場合ですと、MCPを利用することで外部のAIモデル(ChatGPTやClaudeなど)が、New Relicの観測データにアクセスすることが可能になります。
MCPの良いところは、従来のAPI連携のようにカスタムな統合を都度構築することなく、AIにNew Relicの「ツール(機能)」を提供できることにあります。
New Relic AI Model Context Protocol (MCP) ※プレビュー版
New Relic AI Model Context Protocol (MCP)
2025年12月現在、プレビュー版ではありますが、
New RelicではNew Relic AI Model Context Protocol (MCP) というMCPサーバーが提供されています。
NewRelic AI MCPを利用して、AIに質問するだけで、
- NRQLクエリを自動生成・実行し、データの取得・分析
- 監視内容の調査やインシデント状況の把握
- トラブルシューティングに必要な専門的な分析レポートを自動作成
など、AIにNew Relicの「データ分析者」や「オペレーター」として機能させることが可能となります!
前提条件
サポートされるAI開発ツール(VSCode, ClaudeCodeなど)や前提条件などについてこちらに記載されてますので、ご利用前にご確認ください。
New Relic AI MCPサーバでできること
New Relic AI MCPサーバを利用することで、できることはこちらにまとまっています。
2025年12月現在、主に実行できる機能は以下の6つのカテゴリに分類されます。
- エンティティとアカウントの管理 (discovery)
New Relic内のアプリケーション、ホスト、アカウント、ダッシュボードといった基本リソースを検索・特定します。- データ アクセス (data-access)
自然言語のリクエストをNRQL (クエリ言語) に変換し、New Relicのデータに対して実行します。- アラートと監視 (alerting)
現在未解決の問題、インシデント、アラートポリシー、合成モニターの状態をリストし、監視状況を把握します。- インシデント対応 (incident-response)
問題発生時に、デプロイメントがパフォーマンスに与えた影響を分析し、エンドユーザー影響レポートやアラート分析レポートを生成します。- パフォーマンス分析 (performance-analytics)
ゴールデンメトリクス(スループット、エラー率など)、トランザクション、ログを分析し、異常な動作やパターンを特定します。- 高度な分析 (advanced-analysis)
ログ分析やNRQL変換など、複数のデータソースや複雑なタスクを組み合わせて深い洞察を導き出します。
New Relic AI MCP の価値
AI連携による「話しかけるだけ」の課題解決
私たちが解決したい課題に対し、MCPサーバーは下記のような価値を提供してくれます。
-
自然言語でNRQL/データ分析が可能に
NRQLの知識がなくても、「過去1時間のカートサービスのエラー率を教えて」と聞くだけで、AIがNRQLを生成・実行し、結果を返します。これは初動のスピードアップに直結します。 -
開発環境からのダイレクトアクセス
「コンテキストスイッチなし」でトラブルシューティングが可能となります。つまり、 IDE(VS Codeなど)やAI開発環境から、New Relicのコンソールに移動せずにデータにアクセスできます。
これにより、MTTRを劇的に短縮することが可能となります。 -
外部AIエージェントとの標準化された統合
MCPサーバーが標準的なゲートウェイとなり、AWS DevOps Agentなどの外部AIエージェントにNew Relicの「ツール」を提供します。これにより、自動的な根本原因分析やオペレーションの自動化が容易になります。
AIがMCPを使ってデータを取得し、人間を介さずにアラート対応やデプロイメント影響分析を行う「運用の自律化」の未来は、すぐそこにきています。
→この「AWS DevOps Agent」については別の機会にご紹介します。
【デモ】 AWS Q Developerで実現する、属人化からの解放!
ここからは、私が最も興奮した「コンテキストスイッチなし(ブラウザとIDEを行ったり来たりする操作不要)」の「AI x New Relic」の操作デモをご紹介します。
事前準備
事前準備として
- New Relic アカウント
- Node.js のインストール(一部の認証方法で必要)
- 対応しているMCPクライアント
が必要となります。
対応しているMCPクライアントとセットアップ方法は New Relic 公式でも紹介されています。
今回はこちらを参考に「VS Code - Amazon Q Developer」へ設定します。
※VS Code へAmazon Q Devenloperは導入済みなので必要であればこちらを参考にしてください。
1. New Relic にて「New Relic AI MCP Server」を有効化する
まずはじめにNew Relic AI MCP Server プレビューを有効する必要があります。
- New Relic UI で、左下隅にあるユーザー名をクリックします。
- Administration > Previews & Trialsを選択します。
- New Relic AI MCP Server - View detailsを選択します。
- プレビューを有効にします。
Status がOpted inとなれば準備OKです。
2. Amazon Q Developerと New Relic MCP サーバの連携設定
New Relic MCPサーバの認証方法は2つの方法があります。
- OAuth方式(推奨)
- APIキー方式
今回は推奨方式である、OAuth方式で認証を行います。
MCP: server 'NewRelicMCP' failed to connect: SSE error: Non-200 status code (406)
Amazon Q Develperでは上記のような、OAuth認証はエラーにより設定できませんでした。
今回はAPIキー方式で認証します。
- New Relic UI で、左下隅にあるユーザー名をクリックします。
- API Keys を選択します。
「Create a Key」を選択し、「User Key(NRAK-xxxxのキーです)」を作成します。
続いて、VSCodeのAmazon Q DeveloperにNew Relic MCPサーバを設定します。
VSCodeでAmazon Qを開いた状態で、「Configure MCP Servers」の設定ボタンを選択します。
下記項目を入力します。
- Scope:
Global/This workspace※好きな方を選択してください - Name:
NewRelicMCP※好きな名前を設定ください - Transport:
http - URL:
https://mcp.newrelic.com/mcp/ - Headers
- Key:
api-key - Value:
NRAK-xxxx※先ほど作成した NRAK-xxx で始まるAPIキーを指定
- Key:
全て入力したらSAVEします。
成功するとこのような画面になるので、設定にこだわりがなければそのまま閉じてください。
動作確認
New Relicの情報収集ができるのか確認してみます。
NewRelicのアカウント何個ある?
と問いかけてみます。
すると、
実際の稼働中環境のアラート分析をしてみた
我々インフラエンジニアが調査をしようとすると、New Relicに作成しているダッシュボードやNRQLを使った分析が必要になってきます。New Relic AI MCPはそういった手間を排除でき、さまざまな場面で運用効率を向上させることができます。
直近1週間のアラート分析
直近のアラート分析のために、下記分析を依頼します。
- NewRelicアカウント: xxxxxx
- 直近1週間のアラートを分析して頻度が多いアラートを表示して
- アラートに対するアラート削減策があったら合わせて教えて
- テスト中やGolden Signalsは対象から除外して
- サーバごとに分析をして
- 時刻はJSTで確認して
しばらくすると下記回答をしてくれました。
アラートごとに発生回数をまとめてくれており、
また、各アラートに対して原因分析や改善案も提示してくれます。※改善案は確認した上で適用してください。
より詳細なアラート分析
もう少し詳細に1サーバごとに分析をしてもらいます。
EC2メンテナンスサーバ CPU負荷異常
- 異常アラートが実際に発生したサーバーを特定して、監視対象のみを対象にして
- サーバごとに分析して
- 直近1週間のアラートで確認して
サーバごとに違反回数や最大値をまとめてくれました。
他にも先ほど同様に、アラートを減らすための各サーバに対する推奨アクションも教えてくれます。
今は2025年12月なので明らかに日にちがおかしいです。※日にちがおかしいだけで、データが直近で合ってるのは次で確認しています。
人の目でも確認してみる
先ほどのようにAIが出力したデータ確認も兼ねて、人間の目でも確認してみます。
実際のコンソールでデータを確認したいので、リンクかグラフを生成して
ダッシュボードへのリンクであったり、データを確認するためのNRQLの発行をしてくれました。
IDE上でグラフは出せないようです。
下記の通り、データが一致したので、
先ほどのAIが2025年1月と表示した時間が間違っているだけのようでした。
今回ブログ上では簡単に出たように見えますが、実際は入力プロンプトの調整などで一発で欲しい情報抜けませんでした...こういったAIへ与える、欲しい情報に的確にアプローチするためのノウハウを貯める必要がありそうと感じました。
ちなみに、
このように変更すれと、毎朝これをAIに聞くだけで、前日からのアラート確認が一瞬で完了します。
- NewRelicアカウント: xxxxxxxx
- 昨日から現在までののアラートを分析して頻度が多いアラートを表示して
- アラートに対するアラート削減策があったら合わせて教えて
- テスト中やGolden Signalsは対象から除外して
- サーバごと分析をして
- 時刻はJSTで確認して
こういった正確に欲しい情報を抜き出すための、プロンプト作成が次の課題ですね。
その他に使えそうな使い方
コスト削減提案
- NewRelicアカウント: xxxxx
- コスト利用料を調査して、削減の案あれば提示して
コストに対しても、分析して色々とアドバイスしてくれます。
過剰スペックの見直しだけでなく、アラート数削減による人件費についても考慮してくれるのはありがたいですね。
エラー分析 → アプリケーション改修
今回は試せませんでしたが、AWS GameDayで私も体験した、
- Syntheticsのエラー内容 -> 原因分析など
- APMのエラー分析 → アプリケーションの改善提案 → 改修
など、実際のビジネスKPIに直結するような調査・改善といった高度なタスクも得意分野になります。
今回のように、Amazon Q Developer x New Relic AI MCP との連携が鍵になってきます。
まとめ
今回のようにNew Relic上のリソースに関するメトリクスからの洞察ではなく、実際のエラーやアプリケーションコードなども利用すると、もっと高精度かつ優秀なアドバイスをしてくれる期待値が上がります。
New Relic AI Model Context Protocol (MCP) Serverは、オブザーバビリティのスキル格差を埋める「翻訳機」であり、あなたの頼れる「パートナー」です。
- クラウドコスト削減に課題を感じている方へ
AIによる高度なデータ分析で、最適なコスト管理を実現できます。 - 障害対応の属人化に悩む方へ
自然言語アクセスとAIエージェントの活用により、「データ活用の標準化」が実現します。
オブザーバビリティは「見るもの」から「会話するもの」へ進化をしています。
あなたもMCPサーバーを導入し、インフラエンジニアの新しい価値を体験してみてください!
投稿者プロフィール
-
2024 Japan AWS Top Engineers
2025 AWS Community Builders
AWSを使ったサーバレスアーキテクチャ・コンテナサービスの設計・構築を担当。
最新の投稿
AWS re:Invent 20252025年12月15日AWS GameDayでも大活躍!New Relic MCPサーバーで実現する「話しかけるだけ」のNew Relic活用
AWS2025年3月31日Aurora Provisioned vs Serverless v2:最適な選択と移行ガイド
AWS2025年1月17日AWS X-Ray SDK for Python 実践ガイド:トレース設定から可視化まで深堀りしてみた
NewRelic2024年12月25日【New Relic】アプリ初心者でも大丈夫!インフラエンジニアがはじめるAPM/Browser超入門 〜1時間で始める可視化への第一歩〜







