Amazon Q Developer Pro企業導入の実践ガイド

はじめに

Amazon Q Developer Proを導入した経験をもとに、実際の構成、コスト、ユースケース、そして遭遇したハルシネーションとその対応策についてまとめてみました。

目次

企業利用する場合の構成について

企業利用においてはセキュリティとガバナンスの観点から、Identity Centerを通じた統合認証とアクセス管理を推奨します。
これにより、ユーザーの一元管理、適切な権限付与、監査ログの取得が可能になります。

  • Management Account: 企業利用のIdP と接続されたIdentity Center 設定を実施(実例としてOkta)
  • Q Developer Pro Management Account: Q Developer Proのサブスクリプション管理を行う
  • Client: 開発者、運用者 が利用するローカルマシン

コスト

1ユーザあたり月額 19USD(一部トランスフォーメーション機能は行数課金)

無料のQ Developer(個人利用)と比較して、Proでは下記の追加機能が利用できます

  • 企業のコードベースとの統合(カスタマイズ)
  • 管理者向けダッシュボード
  • より高度なセキュリティ機能
  • エンタープライズサポート

Amazon Q Developer の料金
https://aws.amazon.com/jp/q/developer/pricing/

注意点について

データの取り扱い

Q Developer Proは標準でデータのオプトアウト(AWS側での学習に使用しない)が設定されていますが、企業のセキュリティポリシーに応じて設定を確認する必要があります。

リージョンの制限

東京リージョンでの提供は未定のため、レイテンシやデータ所在地の要件がある場合は注意が必要です。

ネットワーク制限

Q Developer ProはAWSのAPIエンドポイントとの通信が必要なため、企業のファイアウォール設定で適切な通信許可が必要です。

ユースケース

契約上、コンプライアンス上クリアな案件に限りますが、AWS上に構築する/されたシステムにおけるあらゆる作業で利用しています。
個人的に利用シーンが多い物について列挙してみました。

開発業務

  • 仕様書・設計書の章立て検討/素案作成
  • 設計書に沿ったプログラム開発/テストケース作成(経験上ほぼバックエンドのみ)
  • IaCコード作成(CloudFormation/SAM/CDK)
  • Well-Architectedをベースとしたチェック
  • 古いアプリケーションFramework/Runtimeバージョンアップのための評価、アップデート作業の方針作成
  • Athenaクエリ作成

運用業務

  • 監視設計・実装
  • 運用手順書作成/レビュー
  • トラブルシューティング
  • セキュリティチェック

遭遇したハルシネーション・トラブル、対応策

プロンプトの工夫で低減出来る事もあると思いますが、ご参考までに。

過剰な権限

生成されたIaCコードでS3バケットのReadのみで足りる認識の部分がWrite権限となっていたので、本当に必要か?という質問に対し、オブジェクト操作権限が必要と言い張られた。
が実際にはReadのみで動作する作りだった。

対応策: コードレビュー、他ツールでも確認する、実際に検証してみる

存在しないイベント

AWSサービスで⚪︎⚪︎という事象解決のために、通知するシステムを提案して。
といった内容に対し、イベントトリガーのJSONがドキュメント記載と異なっており、意図した挙動とはならないシステムだった。

対応策: 公式ドキュメントの確認、実際に検証してみる

Athenaでは利用できないSQLだった

複雑なクエリになってくると、他RDBMSなら通りそうだけれどもSyntaxエラー、というクエリが提示される事がありました。

対応策: 実際に検証してみる

利用状況の確認

導入するだけですと障壁はそこまで高くないのですが、利用状況のトラッキング、改善には地道な活動が必要となってきます。
Q Developer Pro は状況をダッシュボードにて確認、もしくは S3バケットに日時でCSVデータを作成し、ユーザ別にQ Developerがどのようなアクションを実施したかの件数を、デベロッパーユーザーアクティビティレポート として出す事が可能です。

また、公式Blogにて下記のようにAIの導入状況/効果をより深く計るためのサービス紹介もあり、企業利用する場合には非常に重要な指標となると感じました。

Amazon Q DeveloperとJellyfishを使った開発者の生産性測定
https://aws.amazon.com/jp/blogs/devops/measuring-developer-productivity-with-amazon-q-developer-and-jellyfish/

まとめ

本格的に個人利用を開始したのがre:Invent 2024以降でしたが、エージェント機能拡張、マルチモーダル対応、日本語対応、MCP(Model Context Protocol)対応(AWS MCP Server登場)など、日々の進化を体感しています。

Amazon Q Developer Proをご利用されたい、導入されたい方はぜひご相談下さい。

投稿者プロフィール

takashi
Japan AWS Ambassadors 2023, 2024
開発会社での ASP型WEBサービス企画 / 開発 / サーバ運用 を経て
2010年よりスカイアーチネットワークスに在籍しております

機械化/効率化/システム構築を軸に人に喜んで頂ける物作りが大好きです。

ABOUTこの記事をかいた人

Japan AWS Ambassadors 2023, 2024 開発会社での ASP型WEBサービス企画 / 開発 / サーバ運用 を経て 2010年よりスカイアーチネットワークスに在籍しております 機械化/効率化/システム構築を軸に人に喜んで頂ける物作りが大好きです。