プロジェクトマネジメントについて


今後のビジネスはどのように移り変わるのでしょうか?時折耳にする話題は『AIが人間の作業を代替する』問題です。私個人としては、これはとても良いように思います。人は定型的な業務を抜け出し人にしかできない仕事に従事できるようになります。

定型的な仕事は、速く、正確に、黙々と働くAIやロボットの得意分野です。長年の経験をもとにした機器の故障予知、大量のデータから規則性を見つけるデータ分析など、これまで熟練者が必要とされていた仕事でもAI活用が広がることでしょう。

これから人間に期待されるのは、創造性が求められる仕事、メンタルケアが必要な仕事、人と調整やコミュニケーションが求められる仕事など、非定型な業務に変化していくと予想されています。

今までにないプロダクトやサービスを、多数の人の協力のもと創り上げるためにプロジェクトマネージャーという存在はプロジェクトの成功の大きい要因の1つとなります。これはAIではなく、人しかできない非定型の業務です。プロジェクトマネージャーの能力は仕事に限らず、冠婚葬祭や遊びのワンシーンなどをプロジェクトとして捉えれば、プライベートの中でも発揮できる能力となるでしょう。どんなプロジェクトであってもプロジェクトマネージャーは頼りされる存在であり、必要不可欠な存在です。

この記事を読んでいるみなさんも、プロジェクトを成功に導き、頼りにされるようなプロジェクトマネージャーへの階段を登る第一歩として踏み出してみませんか?

<対象読者>

  • プロジェクトマネジメントといわれても何をすればよいかわからない方
  • プロジェクトリーダーを経験してはいるが、プロジェクトマネージャーを任されそうな方
  • プロジェクトマネージャーを経験してはいるが、自己流で進めている方

プロジェクト基礎知識

プロジェクトと通常業務の違い

ビジネスに携わる人はプロジェクトに参画した経験があると思います。ビジネスマンは仕事を日々こなしていると思いますが、仕事の中でプロジェクトとはどういう位置づけでしょうか。お客様の来社対応、発注処理などの事務手続き、倉庫の備品整理などはプロジェクトとは違います。これらは、プロジェクトではなく毎日こなす通常業務に分類されます。

では、プロジェクトとはなんでしょうか?

業界や職種、経験によってプロジェクトの定義は異なりますが、限られた期間と予算の中で推進され、計画・実行・管理のもと「有期性」と「独自性」を求められるのがプロジェクトになります。

有期性とは、明確な開始時期と終了時期があり、その期間内でプロジェクトの目標やゴールを達成することです。プロジェクトが終わるのはプロジェクトの目標が達成された場合、あるいは何らかの理由で中止された場合です。プロジェクトによって期間が幾年にわたる場合もあれば数か月で終わるようなものもあり様々です。通常業務は終わりの時期がなく、企業が続く限り永続的に続きます。

独自性とは、今までにないプロダクトや組織をよりよいものにするシステムを開発するといった企業をよりよくする目標を考えるために必要な要素です。顧客のニーズに合ったプロダクトや、社員のヒアリング結果を鑑みて、今までにないものをつくるという目的でプロジェクトが立ち上がります。

一方で、通常業務は手順や指示などの決まりきったフローに則り、繰り返し行われるものです。独自性とは対称的に決まりきった作業を忠実に実行することが求められる仕事です。

このようにプロジェクトと通常業務は性質が異なる仕事で定型的なものではないのです。

では、プロジェクトを成功させる要因とはなんでしょうか?

成功と失敗を分ける要因(制約条件を決める)

有期性でも触れましたが、プロジェクトには終了時期があります。期待通りに目標を達成する場合もあれば費用や期間の問題で中止することもあります。

では、プロジェクトを中止せずに期待通りに目標を達成するために必要なものはなんでしょうか。

それは、制約条件を設定することがカギになります。制約条件には種類がありますが、重視されるものは「スコープ」「スケジュール」「コスト」が一般的です。

スコープとは、プロジェクトが提供する成果物やそれを創出するために必要な作業を指します。成果物の範囲を決めることでプロジェクトの作業範囲を明確にします。

スケジュールは、プロジェクトの成果物を完成させる期限のことです。プロジェクト全体の指標になるのできわめて重要で、作成難易度は高いです。プロジェクト中に何度も変更が行われるものなので、更新・共有のしやすさが大事になります。

コストは、プロジェクトの目標を達成するために必要なお金や時間です。プロジェクトで予定されていた費用よりも費用が大きくなるとプロジェクトは失敗になってしまいます。

以上のような制約条件を設定し、プロジェクトメンバーに合意を得た上で、制約条件を満たすかつプロジェクトの目標を達成できるかによって成功・失敗は判定されます。

プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントの重要性

プロジェクトマネジメントとは、知識・スキル・経験をもってプロジェクトを成功させるための活動を指します。

前述のようにプロジェクトでは合意された制約条件の中で目標を達成しなければなりません。

しかし、制約条件は相互関係をもっているので、ひとつを優先するとそのほかに影響が出てしまいます。プロジェクトマネジメントでは目標を達成しつつ「スコープ」に沿って「スケジュール」と「コスト」の制約条件を満たす方法を考えます。

制約条件を調整しながらプロジェクトを成功させるためにプロジェクトマネジメントの仕事が必要になります。

プロジェクトマネジメントの効果

マネジメントが適切に行われれば、作業内容・作業時間・担当者も明確になっており、問題が発生した場合の対処も決まっていて適切な手順に従って対応することができます。プロジェクトの進捗・コストやリスク状況は監視され、計画からずれや問題が発生しないように適宜対応・監視を行います。

このように複数の制約条件を調整・管理し、計画通りに進めることができれば目標を達成することができます。綿密な計画と適切な管理がプロジェクトの成否を左右するのです。

プロジェクトマネジメントのプロセスグループ

プロジェクトマネジメントのプロセスはプロジェクトにもよりますが、基本となる体系的なフレームワークが存在しますのでそれを紹介します。

プロジェクトマネジメントでは全プロセスを作業の位置づけにより5つのプロセスに分類します。分類された5つのプロセス群をプロセスグループと呼びます。プロセスグループは「立ち上げ」「計画」「実行」「監視コントロール」「終結」の5つのプロセスで構成されます。

「立ち上げ」では、プロジェクトを定義し、認可します。「計画」では、プロジェクトの目標を達成するための計画を、作成します。「実行」では、計画に従って、作業を実施します。「監視コントロール」では、計画との差異を識別し、調整します。「終結」では、プロジェクトで作成した成果物などを正式に受け入れ、プロジェクトを正式に終了します。

これらのプロセスグループをフェーズ化し、フェーズ内のプロセスグループをPDCAのサイクルを回しながらプロジェクトを推進します。

プロジェクトマネージャーとは

役割と権限

プロジェクトマネージャーはプロジェクトの目標を達成し、プロジェクトメンバーを管理する責任を負います。

プロジェクトでは非常に重要な役割を担うのがプロジェクトマネージャーですが、実際にはどういった責任が課されるかを明確にする必要があります。

組織によっては、プロジェクトマネージャーの権限が非常に大きく、予算内での決済権限まで持つ場合もあれば、決済権限の部門の下に配置される場合もあり、その場合は権限が限定されることになります。

人事権や決済権については制限されることが多いため、プロジェクトマネージャーになる際は自分がどこまでの権限を持ってどの程度の責任があるかまでを明確にしておかないと、プロジェクトを推進する最中で権限がないため進めることができない、なんて事態になりかねないので気をつけましょう。

求められる知識・スキル・能力

プロジェクトマネージャーには様々な知識・スキルが求められます。

プロジェクトマネジメント力・リーダーシップ、コミュニケーションスキル、問題解決力、交渉力、管理能力、ITスキルなど幅広い範囲が求められます。スキルの深みよりは幅広さの方が重要で、深みが必要な場合は専門家の参画を検討したほうがよいでしょう。広範なスキルセットを求められることになりますが、まずは体系化されたプロジェクトマネジメントを学ぶことが効率的です。

経験を積む時間を待つのも、各分野の知識をひとつずつ学習するのも一つの手段ではありますが、まずは基本の一の型を押さえた後には効果が倍増します。PMBOK関連の書籍は多くでているので、書籍で学ぶことが手軽です。

基礎的な知識・スキルを体系的に学んだあとに、プロジェクトの中で経験とスキルを積み上げて行けばよいでしょう。

心得

最後に、プロジェクトマネージャーに必要な心得に触れたいと思います。冷静さと謙虚さと学習意欲は大事です。他にもいろいろとありますが、マインドセットとして心に留めておいてください。

プロジェクトを進めるうえで、障害はつきものです。

そのときにメンバーから受ける報告は悲観的な内容がほとんどで、プロジェクトの雰囲気も悪くなってきます。プロジェクトマネージャーにとってはコミュニケーション先がたくさんいますが、プロジェクトメンバーにとっての相談先はプロジェクトマネージャー1人なんてこともあります。そのメンバーが不安がっているときにプロジェクトマネージャーが動揺しているとメンバーの精神は崩壊してしまいます。

プロジェクトマネージャーは精神的にも最後の砦なのです。どんな報告を受けても冷静に受け止めて一緒になって考えてあげる余裕を見せる、一つ解決していく声掛けをする冷静さがとても重要です。

プロジェクトを進めるうえで、コミュニケーションのやりとりの仕方も問題になることがあります。例えば、偉そうな口ぶりになったり命令口調になりがちだったり、「こんなこともわからないのか」なんて心無い言葉が出てくることもあります。

気持ちは非常にわかるのですが、その手の言葉は我慢して飲み込むようにしましょう。作業を行ってくれるのはメンバーです。その作業がなければプロジェクトが完遂することはありません。メンバーのモチベーションを保ちよりよいパフォーマンスを発揮させるような環境づくりは大事です。

意見の否定や命令口調があればマネージャーとのコミュニケーションを嫌がるようになり伝達に支障をきたしてしまいます。傲慢なコミュニケーションにならずにプロジェクトを進める仲間として接するようにしましょう。

プロジェクトマネージャーは多くの知識が必要です。マネジメント以外の知見も当然ながら求められます。前述したとおり、幅広い知識が必要になるので日々情勢や技術にはアンテナを貼り、情報収集を怠らない学習意欲が必要です。

特にIT分野では移り変わりが激しいため日々技術に触れる機会づくりも積極的に行っていき知識のアップデートをしましょう。

最後に

プロジェクトマネージャーに完璧はありません。過去の自分より少しでもよくなるように一歩ずつ地道な努力をするしかありません。プロジェクトマネージャーを一通りこなせるようになったとしても知識の更新は必要で学び続けなければなりません。プロジェクトマネージャーが学び続けることに終わりはありません。

最初は完璧はないんだと割り切って少しずつ学び、自分のできる範囲を増やしていきましょう!